こんにちは、ぱるまです。この記事では2022年にやった数学を振り返っていきます。
かなり雑に列挙していきます。
カーネル法
「カーネル法入門」
「カーネル法入門」(福水 健次)を買いました。
ひさしぶりに数学の本買ったよ😊
— ぱるま (@paruma184) 2022年1月25日
あとiPadの保護フィルムも買ってみた☺️ pic.twitter.com/fK8Cc9Xs0h
2章の再生核ヒルベルト空間をちょこっと読んだくらいで、ほかはあんまり読めてないです。 ソボレフ空間みたいな関数解析的な概念が出てきて、カーネル法はこういうのも出てくるんだってなりました(ソボレフ空間みたいなの全然わからない。)
コーシー・シュワルツの不等式
「カーネル法入門」では、以下のような行列式を用いたコーシー・シュワルツの不等式の証明が出てきておもしろかったです。(実際には「カーネル法入門」では内積ではなく、一般のカーネルで証明されていました)
コーシー・シュワルツの不等式、判別式を使った証明が有名だけど、グラム行列の行列式を用いた証明もあるってことを知った。
— ぱるま (@paruma184) 2022年2月13日
コーシー・シュワルツの不等式は2×2のグラム行列の行列式が0以上ってことを言ってるんだね。 pic.twitter.com/DuERxd7cwB
span{k(x, -) | x∈X} の稠密性
カーネル法を勉強していて、疑問に思ったことをブログに書きました。
ノルム空間での線形写像の有界性と連続性が同値な話
カーネル法を勉強していたら、ノルム空間の基礎事項が気になったので復習をしました。
ノルム空間での線形写像の有界性と連続性が同値な話。
— ぱるま (@paruma184) 2022年1月29日
有界性の同値な表現を与えて、ぱぱっと証明できるようにしてみた。
連続⇒有界の証明で、点0での連続性でε=1にしたものが有界性を表しているってぱぱっと認識できるようになった。
Overleaf: https://t.co/lEBLEii3vo https://t.co/TUbrPYgOIj pic.twitter.com/wgGcbq6Hb3
圏論
ベーシック圏論
ベーシック圏論を読み終えました。時間はかかりましたが、具体例や説明がわかりやすい本でした。 圏論の基本的な概念(随伴・表現可能関手・極限)に少し慣れることができたかなと思います。
ベシ圏だいたい読み終わった!😊
— ぱるま (@paruma184) 2022年9月25日
この本に出会ってから3年近くかかってしまった。でもおもしろかった! pic.twitter.com/zI0o61s9JP
直積の普遍性で ∃! を ∃ にしたらどうなるか
気になったので調べてみました。
直積の普遍性で、∃!を∃にしたらどうなるんだろうっていうのを考えてた。
— ぱるま (@paruma184) 2022年8月10日
∃だと、X×Y×{0,1}みたいなX×Yより大きな集合も条件を満たしてしまうっぽい。 pic.twitter.com/64ESPVLuzc
(和集合|共通部分)の(像|逆像)
集合論には、
- $f[A_1\cup A_2] = f[A_1] \cup [A_2]$
- $f^{-1}[A_1\cup A_2] = f[A_1] \cup [A_2]$
- $f^{-1}[A_1\cap A_2] = f[A_1] \cup [A_2]$
は成り立つが、
- $f[A_1\cap A_2] = f[A_1] \cap [A_2]$
は一般には成り立たない($\subseteq$ なら成り立つ)という少し不思議(?)な話があります。
これが、RAPL(右随伴が極限を保存する)やLAPC(左随伴が余極限を保存する)から説明ができるのがおもしろかったです。
ざっくりいうと、
- 共通部分はある種の極限、和集合はある種の余極限
- 逆像は左随伴も右随伴も持つが、像は右随伴しか持たない
ことで説明ができます。*1
また、圏論の概念を直接使わずに RAPL の証明の流れで $f[A_1\cup A_2] = f[A_1] \cup [A_2]$ を証明してみました。
この f[A₁∪A₂] = f[A₁]∪f[A₂] の証明、めっちゃおもしろい😊 pic.twitter.com/g73z8fMMpN
— ぱるま (@paruma184) 2022年9月14日
個人的にはこの証明はかなりおもしろいなと感じています。圏論の背景を知っていればそれなりに自然な証明ですが、圏論を知らない状態だとかなりトリッキーに見える辺りが面白いなと感じています。
圏論の基礎
巷で有名な「圏論の基礎」を買いました。「ベーシック圏論」が読み終わりそうなタイミングで買いました。
圏論の基礎を買ってしまった pic.twitter.com/VTZRm07GRH
— ぱるま (@paruma184) 2022年9月16日
この本は原著が "Category for the Working Mathematician" で、日本語の「圏論の基礎」ってタイトルを見て圏論の入門書と勘違いすると痛い目を見ることで有名です。
そんな本ですが、「ベーシック圏論」を読んだおかげで「圏論の基礎」の前半部分(「ベーシック圏論」とかぶっているところ)はなんとなく理解できました。ただ、はやり「ベーシック圏論」のほうがコンパクトにかかれていて、初めて勉強するなら「ベーシック圏論」のほうがずっとやりやすそうだと思いました。
以下、「圏論の基礎」をパラパラ読んだときの感想です。
圏論の基礎をパラパラ読んでる(精読はしてない)けど、結構おもしろい。
— ぱるま (@paruma184) 2022年9月18日
ベシ圏で知ったこの概念には、こういう説明や例もあるんだぁ、みたいな感じ。
あと、章ごとにある注釈(著者のポエムみたいなの)すごいおもしろい。 https://t.co/Ec1T88HM5x
ぱらっと圏論の基礎を見て、ベシ圏は例がわかりやすいし概念がコンパクトにまとまっててよいなぁとなった。
— ぱるま (@paruma184) 2022年9月16日
(最初に通しで読むなら圧倒的にベシ圏の方が読みやすそうだなぁってなった)
圏論の基礎はベシ圏には載ってない例や概念が豊富で、ベシ圏の後にかいつまんで読む分にはおもしろそう。
モナド
「ベーシック圏論」にはモナドは記載されていなかったため、「圏論の基礎」で勉強をしました。
主に、T代数やクライスリ圏について勉強しました(Beck の定理は難しそうだったのでノータッチ)
「ベーシック圏論」の随伴の概念が理解できていれば議論は追える内容でした。
プログラミングで出てくるモナドでは全然感じませんでしたが、モナドは割と代数的な概念なんだなと勉強していて思いました。
圏論の考えを使った集合論の公理
圏論の考えを使った集合論の公理に ETCS があります。これは(ETCS という名前は出てきませんが)ベーシック圏論の3章でも紹介されています。
この集合論の考え方を使えば、数学で新しい見方ができるかなと思ってちょっと勉強してみました。しかし、場合分けすらうまくできなくて(できるとは思うがやり方が分からなくて)断念しました。
圏論の歩き方
今読んでる途中ですが、おもしろいです。例えば、4章の「プログラム意味論と圏論」のところで、表示的意味論が関手として表現でき、関手の定義域を変えることでいろいろな表示的意味論が得られるという話がおもしろいなと思いました。
圏論的論理学
以下のツイートのPDFを見て圏論的論理学の初歩の話をざっくりと見ました。
圏論的論理学のpdfです。トポスで型付き論理を解釈する方法について勉強したことをまとめました
— ちょーさん (@kyo_math1729) 2020年9月28日
今日の発表を受けていくらか修正しましたがまだ誤植等あればお知らせくださいhttps://t.co/RC9iNpJZeB
圏論の概念の一つであるトポスを使って、型付きの直観主義論理の意味論を構成するという話です。
⊤, ⊥, ∧, ¬, = あたりが一般のトポスで定義できるというのは面白いなと思いました。
その他
Coq
証明に対する見方を増やしたくて Coq の勉強をしました。
以下の本などで勉強しました(この本は3年くらい前から買ってたけれどずっと放置してた)
ただ、思ったより Coq が難しくてモチベが続かなくて断念しました。まあ定理証明系の雰囲気は少しは触れられたかなと思います。
数学のカンバン作成
Notion で数学用のカンバン(やりたいこと・やったことなどを書くところ)を作りました
最近は数学のやることをカンバン管理してる。やりたいなって思ったこと書いておけば忘れずに済むし、割と良さげ。
— ぱるま (@paruma184) 2022年9月25日
(最近カンバンでタスク管理するのにハマってる) pic.twitter.com/oxyp7lVHsT
こういうの勉強したいなって思ったらとりあえず書いておくという運用をしています。
命題論理における位相空間論の応用
命題論理と位相空間論関係なさそうなのに、こうやって位相空間論が応用されてるのすごいおもしろかったです。
位相について具体的には、3進数展開を用いて、可算無限個の命題変数の0,1の割当(付値という)を実数に対応させて、そこで位相の話をするみたいな。
— ぱるま (@paruma184) 2022年2月5日
命題論理と位相空間論関係なさそうなのに、こうやって位相空間論が応用されてるのすごい面白いなぁって思いました😊 pic.twitter.com/J9fDag0ujG
DBの正規化の話
数学というよりかは情報系の話ですが、情報系の概念を数学の言葉(集合論)で書き直して議論をする記事を書きました。
参考: 2021年のふりかえり
1年前に以下の記事に書きました paruma184.hatenablog.com
2023年にやりたいこと
- 圏論の応用の話
- 確率論
- 各種分布の話を理解しておきたい
- 条件付き期待値あたりを理解しておきたい
- 線形代数・微積
- 群・環・体などの代数系の話
- ブログなどでのアウトプット
- 2022年度はあまりできなかったので。
*1:alg-d さんの together のまとめにもこの話があります: https://togetter.com/li/966701