2022年の数学のふりかえり

こんにちは、ぱるまです。この記事では2022年にやった数学を振り返っていきます。

かなり雑に列挙していきます。

カーネル法

カーネル法入門」

カーネル法入門」(福水 健次)を買いました。

2章の再生核ヒルベルト空間をちょこっと読んだくらいで、ほかはあんまり読めてないです。 ソボレフ空間みたいな関数解析的な概念が出てきて、カーネル法はこういうのも出てくるんだってなりました(ソボレフ空間みたいなの全然わからない。)

コーシー・シュワルツの不等式

カーネル法入門」では、以下のような行列式を用いたコーシー・シュワルツの不等式の証明が出てきておもしろかったです。(実際には「カーネル法入門」では内積ではなく、一般のカーネルで証明されていました)

span{k(x, -) | x∈X} の稠密性

カーネル法を勉強していて、疑問に思ったことをブログに書きました。

paruma184.hatenablog.com

ノルム空間での線形写像有界性と連続性が同値な話

カーネル法を勉強していたら、ノルム空間の基礎事項が気になったので復習をしました。

圏論

ベーシック圏論

ベーシック圏論を読み終えました。時間はかかりましたが、具体例や説明がわかりやすい本でした。 圏論の基本的な概念(随伴・表現可能関手・極限)に少し慣れることができたかなと思います。

直積の普遍性で ∃! を ∃ にしたらどうなるか

気になったので調べてみました。

(和集合|共通部分)の(像|逆像)

集合論には、

  • $f[A_1\cup A_2] = f[A_1] \cup [A_2]$
  • $f^{-1}[A_1\cup A_2] = f[A_1] \cup [A_2]$
  • $f^{-1}[A_1\cap A_2] = f[A_1] \cup [A_2]$

は成り立つが、

  • $f[A_1\cap A_2] = f[A_1] \cap [A_2]$

は一般には成り立たない($\subseteq$ なら成り立つ)という少し不思議(?)な話があります。

これが、RAPL(右随伴が極限を保存する)やLAPC(左随伴が余極限を保存する)から説明ができるのがおもしろかったです。

ざっくりいうと、

  • 共通部分はある種の極限、和集合はある種の余極限
  • 逆像は左随伴も右随伴も持つが、像は右随伴しか持たない

ことで説明ができます。*1

また、圏論の概念を直接使わずに RAPL の証明の流れで $f[A_1\cup A_2] = f[A_1] \cup [A_2]$ を証明してみました。

個人的にはこの証明はかなりおもしろいなと感じています。圏論の背景を知っていればそれなりに自然な証明ですが、圏論を知らない状態だとかなりトリッキーに見える辺りが面白いなと感じています。

圏論の基礎

巷で有名な「圏論の基礎」を買いました。「ベーシック圏論」が読み終わりそうなタイミングで買いました。

この本は原著が "Category for the Working Mathematician" で、日本語の「圏論の基礎」ってタイトルを見て圏論の入門書と勘違いすると痛い目を見ることで有名です。

そんな本ですが、「ベーシック圏論」を読んだおかげで「圏論の基礎」の前半部分(「ベーシック圏論」とかぶっているところ)はなんとなく理解できました。ただ、はやり「ベーシック圏論」のほうがコンパクトにかかれていて、初めて勉強するなら「ベーシック圏論」のほうがずっとやりやすそうだと思いました。

以下、「圏論の基礎」をパラパラ読んだときの感想です。

モナド

「ベーシック圏論」にはモナドは記載されていなかったため、「圏論の基礎」で勉強をしました。

主に、T代数やクライスリ圏について勉強しました(Beck の定理は難しそうだったのでノータッチ)

「ベーシック圏論」の随伴の概念が理解できていれば議論は追える内容でした。

プログラミングで出てくるモナドでは全然感じませんでしたが、モナドは割と代数的な概念なんだなと勉強していて思いました。

圏論の考えを使った集合論の公理

圏論の考えを使った集合論の公理に ETCS があります。これは(ETCS という名前は出てきませんが)ベーシック圏論の3章でも紹介されています。

この集合論の考え方を使えば、数学で新しい見方ができるかなと思ってちょっと勉強してみました。しかし、場合分けすらうまくできなくて(できるとは思うがやり方が分からなくて)断念しました。

圏論の歩き方

www.nippyo.co.jp

今読んでる途中ですが、おもしろいです。例えば、4章の「プログラム意味論と圏論」のところで、表示的意味論が関手として表現でき、関手の定義域を変えることでいろいろな表示的意味論が得られるという話がおもしろいなと思いました。

圏論的論理学

以下のツイートのPDFを見て圏論的論理学の初歩の話をざっくりと見ました。

圏論の概念の一つであるトポスを使って、型付きの直観主義論理の意味論を構成するという話です。

⊤, ⊥, ∧, ¬, = あたりが一般のトポスで定義できるというのは面白いなと思いました。

その他

Coq

証明に対する見方を増やしたくて Coq の勉強をしました。

以下の本などで勉強しました(この本は3年くらい前から買ってたけれどずっと放置してた)

www.morikita.co.jp

ただ、思ったより Coq が難しくてモチベが続かなくて断念しました。まあ定理証明系の雰囲気は少しは触れられたかなと思います。

数学のカンバン作成

Notion で数学用のカンバン(やりたいこと・やったことなどを書くところ)を作りました

こういうの勉強したいなって思ったらとりあえず書いておくという運用をしています。

命題論理における位相空間論の応用

命題論理と位相空間論関係なさそうなのに、こうやって位相空間論が応用されてるのすごいおもしろかったです。

DBの正規化の話

数学というよりかは情報系の話ですが、情報系の概念を数学の言葉(集合論)で書き直して議論をする記事を書きました。

zenn.dev

参考: 2021年のふりかえり

1年前に以下の記事に書きました paruma184.hatenablog.com

2023年にやりたいこと

  • 圏論の応用の話
  • 確率論
    • 各種分布の話を理解しておきたい
    • 条件付き期待値あたりを理解しておきたい
  • 線形代数微積
  • 群・環・体などの代数系の話
  • ブログなどでのアウトプット
    • 2022年度はあまりできなかったので。

*1:alg-d さんの together のまとめにもこの話があります: https://togetter.com/li/966701